水と命をつなぐ庭 -久米島FARMO- 久米島-2024

久米島の豊かな自然と海。その海から生まれる藻類は、命を育み、未来の可能性を広げる存在である。
日本初の藻類農園「久米島FARMO」は、研究・生産・体験を通して藻類の価値を発信する拠点として誕生した。私たちはその施設内において、訪れる人が自然との関係性を肌で感じられるようランドスケープの演出と造園施工を担った。
計画では、久米島の自然を貫く大きな循環―山から生まれた水が川となり、ガマ(洞窟)や地中を通り抜け、やがて海へと還っていく流れ―を主題としている。水は形を変えながら大地を潤し、植物や動物、人々の暮らしに恵みを与え続けている。その循環の姿を庭というスケールで可視化するために、ツワブキやクロツグ、アダン、モンパノキなど島に根付く植栽を選び、丁寧に配置した。
これらの植物は、強い日差しや潮風に耐えながら力強く根を張る存在であり、久米島の自然そのものを象徴している。さらに琉球石灰岩を景石として取り入れることで、積み重なった地層の記憶や大地に宿る悠久の力を空間に刻み込んだ。
植物と石が織りなす風景は、水の旅路と重なり合い、訪れる人に「大地と水が紡ぐ生命の物語」を感じさせる。そこに吹き抜ける風や揺れる葉の影が加わることで、静けさの中にも生命のリズムが息づく久米島ならではの庭の風景が立ち現れる。
藻類が象徴する「水と生命のつながり」と久米島の自然環境を重ね合わせることで、研究施設でありながらも来訪者に安らぎと発見をもたらす新たな体験の場を創出した。
 
デザイン・施工協力:HIFUMI
Photos:Jonathan Liu
Video:Jonathan Liu