波癒 - Namyu the place - 宮古島市 - 2021
《感動を与える非日常》
宿泊事業への新規参入における第一棟目の施設として、沖縄県宮古島の太平洋を一望できる立地に建てた5棟のvilla resort。 「感動を 与える非現実」をテーマに掲げ、都会の喧騒から解き放たれ、ゆっくりとラグジュアリーなひと時を過ごせるように計画された。沖縄では近年急速にリゾート化が進み、大規模な宿泊施設が相次いで建築され、沖縄が沖縄ではない風景になりつつある。沖縄の離島である宮古島も例外ではない。そのような中、沖縄に沖縄を求めて来られる旅行者に対して、どのように沖縄を感じてもらい、沖縄の良さを少しでも持ち帰っていただけるかを考えたときに、大規模であらゆ るアクティビティが整っている大規模宿泊施設ではなく、小規模な施設で、サービスが行き届き、一つ一つの部屋からは宮古ブルーと呼ばれる宮古島の眩い大海原を一望し、都会の喧騒から解き放たれ 爽やかな潮風と波音に包まれながら、ゆっくりと流れる時間の中で 心を癒してくれるような施設を建築することを考えた。ここにしか ない空間とここでしか感じることのできない自然を堪能しながら、プライベート感のある空間で日常を忘れ大切な人と特別な時間を過 ごしていただけるような施設を目指した。
《宿泊施設の計画における設計事務所の役割》
このたび宿泊施設の設計を行うにあたり、設計の初期段階より、「インテリア」「ロゴ・サインデザイン」「植栽」について設計事 務所を中心とし、外部の協力者と共にチームを構成し、クライアントとの協議を重ねて設計を行った。クライアントが考えるコンセプ トやブランディングについて、常に設計事務所がチームの統率を取って進めていくことにより。建築、インテリア、ロゴ・サイン、植 栽という、施設を構成する隅々に渡り、コンセプトがブレることなく、明確なブランディングを持った宿泊施設になるよう考えた。 昨今の商業建築においては各々の分野において専門の業者が作業を行い、それをまた専門の業者が取りまとめていくことが多い。 そのほうが総合的に考えると良いこともあるが、そうすることによ り、建築と施設のコンセプトが相違していくことも少ない。 今回の「波癒 namyu the place」において、改めて商業施設設計の設計事務所の役割についての方向性を示せればと考え、設計作業を行った。
《建築の基本計画》
建築においては、最初に敷地を見た時に、この土地の持っている魅力を最大限に活かせる ような建築にしなければならないと思い設計をはじめた。 この土地には素晴らしいロケーションがあり、そのロケーションがメインとなる建築を作 ることが最大のミッションと考え、そのためには、建築はできるだけ素直にそしてシンプルであった方が良いという考えのもと設計をすすめていった。まず配置についてはできるだけ客室からの眺めを良くするため、敷地形状に沿って、建物 配置を雁行させた。さらに、各棟を仕切る壁を海側に延長させることにより部屋間のプライバシーの確保ができるようにした。 雁行させた配置により、その壁がリズムを生み、また、その壁で景色が切り取られることにより、より印象的な景色が得られるように考えた。道路に面する側はアプローチとしたが、道路との距離も近いため緩衝帯として植栽スペースを設た。 植物により緩やかに分けていく計画とし、50年、100年経った時に成長した植物が建物が 一体化した施設が道路からの素晴らしい景色となるように考えた。
《天然更新する波癒 – namyu の庭》
沖縄にあるほとんどの植栽は、沖縄ではなく「どこかの南国が テーマ」になっている。 波癒-namyu-は宮古島の在来種がメインとなる植栽を行った。 一部海外のヤシや樹木もありますが、これらは近所の民家に植えられてたが増築のため切り倒されると聞き移植したものです。波癒-namyu-の植栽は、100年後には自然の競争原理に従い海外の樹木がなくなっていき、次第に宮古島の植物が繁茂し、海岸沿いの植物と一体化していきます。庭に配置された景石は、建築の際に出た琉球石灰岩を使い宮古島の海岸沿いの造形を取り入れ、この島でしか作れない庭となっています。 「自然の原理・風景」を取り入れた未来に向けた庭となっています。
《植栽構成》
植栽構成は沖縄の在来種をベースに植栽し、風景ブランドを作 ることで、社会的に見ても価値の高い場所となる。「琉球石灰岩」で宮古島の“平らな大地”と“海岸沿いの岩々”を 表現し、「芝と砂利」は“海”を表している。特別感、高級感を出すため、各部屋からそれぞれの前庭は、デザイン要素を変化させ、全体として一体感のある風景とした。とても風の強い場所ということもあり、大きな樹は使用できないため、「塊と広がり」のリズムを作ることで、特別な空間に感じるようなデザインとした。