継承する家 宮古島市 - 2023
敷地は沖縄県の離島、宮古島の市街地から車で約20分の周囲には畑が広がる、古くからの集落の中に位置する。県外から転勤で宮古島に赴任されたご夫婦が、自然豊かな宮古島をこれからの住む場所と決め、土地探しの末、この土地に出会った。その敷地には、樹齢が宮古島の中でも一番古いのではないかと思われるほどの大きなソテツやリュウキュウマツ、ガジュマル、センネンボク、サガリバナ、トックリヤシのほか、マンゴーの木など、元々あったものなのか、先住の方もしくはその前の世代の方が植樹した物なのか、あらゆる植物が雑然と、また鬱蒼と茂る敷地であったが、そのような敷地の永い歴史に魅力を感じ、この地の新しい住人となることをご夫婦は希望し、宮古島への移住と住宅の建築を決意された。
設計の相談を受け、敷地を見たときに、私もご夫婦がこの土地に住むと決めた時の想いをすぐに感じ取ることができた。それほどこの敷地にある植物が魅力的で、力強く、永い歴史を感じるとともに、次の世代に継承していかなければならない土地であることを感じた。そこで、設計するにあたり、まず既存の植物の位置を測量にて図面化し、できる限り既存の植物を残せるような配置を提案した。この土地の中心的な存在であるソテツとリュウキュウマツなどがあるスペースをこの土地の核として各室を計画し、それぞれの室の開口の大きさや配置、また建物のボリュームを吟味する事により、その圧倒的な存在感をもつ敷地内の植物と建築が一体となるように考え設計を行なった。
建築的にも植物の緑と、宮古島の青い空の色を邪魔することなく上手くなじむように、内外共に彩度を落としたコンクリート打ち放し仕上げとし、床天井なども仕上げ材も極力減らして、時間と共に味わいを増していくような建築とした。現代の建築において、庭は建築物の中から見て、愉しみ、癒される物として計画することが多くなっているように思えるが、この度計画した建物は、外部から植物を介して見える建築がその地の自然と共に成長していき、いずれ永い歴史の中でその土地になじみ、継承されていく建築になったと考えている。