首里の集合住宅 那覇市 - 2018
敷地は沖縄県の中心地、那覇市首里に位置する。沖縄の歴史の中でも重要な役割を果たしてきたこの地域に先祖の代から居を構え住み継いできた家の老朽化に伴う建て替えの計画である。クライアントは近年の沖縄の経済事情や市場動向に精通されており、その状況も鑑みて、今回の建替では集合住宅併用の住宅の建築を考え、934.33㎡の敷地に、一部地階、1階は駐車場、2階~5階を共同住宅とし、最上階の6階に住宅の計画を要望された。
計画にあたりまず考えたことは、このエリアでは主要な交通路線で交通量の多い通りに対して、ファサードをどうするかということであった。そこで、なるべく建物は道路よりセットバックさせながら、軒の低い庇で圧迫感を軽減させ、杉板型枠の打ち放しという仕上げで建物に表情を与えることにより、行き交う人や車に対して、景観としての建築を作ることを考えた。
内部は、集合住宅部分に関しては間取りも二種類のパターンを作成し、内装も階層毎に雰囲気の異なるインテリアとし、住む側の選択肢を増やすことで入居者の需要の幅を広げる工夫を行った。6階最上階の住宅部分については、ファサードで使用した杉板型枠の打ち放しをアクセントで使用しモダンな内装としながら、木製ルーバーやヘリンボーン貼りの無垢フローリングなど木の仕上げもふんだんに使用し、温もりも感じられる内装とした。小上がりとした和室はリビングとつながることで大人数の来客にも対応できるようにし、その天井材には建替時に解体した建物から撤去したフローリング材を再利用し、昔の思い出を残すような仕上げとした。先祖から受け継いだ思い入れのある土地での建替という計画において、新しい風景をつくりながら、また新たな建物で住み継いでいくという、建築をつくることで起こりうる様々な事象への責任を感じたプロジェクトであった。新たな時代に引き継がれ、この建物が次の風景をつくっていくことを願っている。